■年中行事だった、たたみの手入れ

 たたみはすぐれたしきものですが、それなりの手人れが必要です。年1回のたたみぽしは、むかしは一家の年中行事みたいなもので、 春か秋のからりと晴れた日、家族総出でたたみを外にも出して日にほします。たたみ が一年間ためた湿気をかわかしたあと、ふとんたたきのような道具でホコリをたたき出 し、その間にゆかのほうもきれいにしました。

 たたみ表がよごれると、うら返しして張りなおし、すりきれたたたみべりもとりかえ ます。それもきたなくなると、新しいのに張りかえて、同時にたたみどこのいたんたと ころを修理します。

 たたみを作ったり修理したりする人を、たたみさし、たたみ職、今はやさしくたたみ 屋さんなどとよびますが、室町時代からある専門の職業です。たたみのへやが少なくな ったこのごろは、すっかり数はへりましたが、ちょっと古くからある町なら、意外なと ころでたたみ屋さんは健在です。

 たたみ屋さんが、昔のころの話をしてくれました。「たいていの人がきれいなたたみで正月をむかえたいと思 いますから、12月はそこらじゅうのたたみ職がいくらがんばってもまに合わないはど仕事 がきたものでした。
そこで、ひと月おくれの旧暦で正月 をする地方のたたみ職が、出 かせぎにきて加勢します。この時期、たたみ職はいっせいに少し値上げをしまし た。

いちばんお客 の多いときに値上げはずるいと思うでしょう。でも、出かせぎのた たみ職は旅費や宿代を使って出てくるのだから、ふつうの料金じゃあ、あまりもうけに なりません。かといって、出かせぎの人たけ高くしたんしゃ、客がつかない。それでみ んなで値上げして、出かせぎの人が働きやすくしたんです。」

平安時代の天皇は一段と大きなたたみにすわったことを思いだし、皇居のたたみをなおしたことがありますか? と聞いてみましたら、意外な返事がかえってきました。「しろうとさんは、皇居の仕事 をしたと聞くと、うでのいい職人だと思うでしょう。
あたしらたたみ職の考えは、ちょっとちがう。あそこには、ぎょうぎのいい人しか柱んでいないから、たたみがぜんぜん いたんでない。だから、たれでもできるんです。たたみ職ってのは、子どもが、さんざ あばれて、ね小使なんかしみこんでいたんだたたみを、もう一度しゃきっときれいにす るのが、うでの見せどころなんだ。だから、皇居の仕事はじまんにならない。」

今はむすこさんに店をゆずっているけれど、やっぱり親父にたのみたいというお客がま だいるという、この年取ったたたみ職、きっと、いいうでの持ちぬしなのでしょう。

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